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MY通信 My Journal


"「あなたは胃癌です」と突然宣告。胃がん奮闘記 相談員が患者さんの立場に逆転!?" Nov. 2008, Vol 1


○胸痛だから心臓かと思ったのに…青天の霹靂!「まじですか?」

2008年11月1日、念のために受けた胃内視鏡の検査の結果を聞きに行っただけで、こんなことを言われるとは予想していなかった。「実は検査の結果、がん細胞がみつかりました。それも低分化胃腺癌と印環細胞癌といって、内視鏡手術で取れるレベルと種類ではないので、すぐに紹介状をもって大学病院へ行ってください。」と担当医師は私の目を見ず、言いづらそうに私に言った。「まじですか?」と驚き、しかしその後は冷静に紹介状を書いてもらう病院の情報のことを聞いて、病院を出た。9日前に内視鏡検査を受けた時、モニターに確かに、胃の壁に変な色の部分が私の肉眼でも見えた。医師は「病理検査に出してみないとわかりませんが、がん細胞の可能性は否定できないですがね。」とわかりにくい日本語を言われた。胃炎だろうと思っていた。なぜなら私は未だかって、胃が痛いとか潰瘍ができたこともない。強いて言えば一年半前から時々胸痛があって、医者に相談すると、「常時でないなら、様子をみましょう。どうしても気になるなら一度循環器科に受診してみてください」と言われていた。そのまま様子を見ていたが、今年の秋、近所の産婦人科の木下病院に婦人科系の検診を受けに行ったついでに、週に一度循環器の先生が他病院から来ていると知り、検査を受けることにしたのだ。しかし、循環器の検査では、何も所見がなかった。医師は「心臓に問題ないので、もしかしたら場所からいって食道炎による胸痛かもしれないので、一度胃内視鏡をとってみてもいいかもね」と言われた。内視鏡、いやだな、と思いつつ、私が仕事上接している利用者さん(たくさんに病気をされていて、在宅の福祉サービスを利用していただいている方)から、最近訪問した時に「どこか長期間に痛いというのは、何かのサインなんだから、すぐに病院いって検査しなさい!若いからって油断してはだめよ!」とあまりにもはっきり言われたのもあり、面倒くさいけど受けることにしたのだ。その利用者さんのアドバイスがなかったら、自覚症状がでるころまでほっておいて、その頃にはリンパに転移、それこそ手遅れになっていたであろう。
私はクリスチャンで普段教会の人々とかかわっているので、宣告後もまず、自分の牧師に電話し祈ってもらってなんとか立っていられた。アメリカ在住の両親には時差があるので、少し時間をおいて電話で知らせた時は、感情をそのままぶちまけた。両親は私以上に衝撃を受けたであろう。また、そばにいてあげられない葛藤も大きかったと。「大丈夫よ、こちらの教会のみんなでお祈りしているから、気をしっかり持ってね」と。翌日が日曜日の礼拝だったから、そこでも教会のみんなに祈ってもらったおかげで、とても平安な心のままでいれた。
がんとわかってからも普通に生活していられたのは、友人達の励ましの言葉と支えがあったから、また教会のみんなが祈ってくれていて心が守られたからだ。もちろんふっと、悲しみや恐れの思いがくる。そのたびに神様に助けて下さい、希望を与え、死の恐れを取り除いてくださいと祈る、すると平安な気持ちが与えられた。この信仰が与えられてなかったら、きっといつも錯乱していたに違いない。神様に感謝した。

Jan. 2007撮影 NJから望むマンハッタン, NY


○実感のないまま、入院・手術

週明け、職場には休むことを伝えて朝早く帝京大学医学部付属溝口病院の外科へ向かった。木下病院で週に一回内視鏡の検査を担当して今回見て下さった先生のところへ受診。先生は私に会うなり、「柴川さん、よく来ましたね!柴川さんはラッキーですよ。普通こんな早期に発見できないですから。」と笑顔で迎えてくれた。とても感じの良い信頼できそうな先生に会えてよかったと安心。木下病院の先生は、「患者さんには病院や医師を選べますので、他の病院に紹介状を書いてほしいとの要望があれば書きますよ。でも、内視鏡を最初から見ている先生なので、帝京の先生のほうが話が早いと思います」と言われたが、これから良い先生と病院を探して、一から検査やりなおしていると1−2ヶ月とかすぐ過ぎてしまう。その間がん細胞は進行し、精神的な負担を考えるととてもセカンドオピニオンとか他の病院ということは私の選択肢にはなかった。この発見の流れからして、この病院のこの先生に導かれているに違いないと感じ、やはりその通りだった。一番早くて11月17日月曜が開いているとのことで、決定しそれに合わせて事前の諸検査をすばやく先生が予約。予想より早い手術がきまり安心した。私の仕事上での利用者の方々の話を聞くと、大学病院だと混んでいて、がんが発見されても手術まで1−2ヶ月待ちがあたりまえだから。

一方で、自分が胃がんで、開腹手術を行う、胃の上部を少し残し三分の二くらい摘出(“胃亜全摘“というらしい)となる、「個人差はあるが胃を全摘した人でも、しばらく休んで仕事に復帰していますよ、ただ胃の周りのリンパも取り除き転移していないかを検査しますので、予後はそれによりますが」と説明された。実感がなかった。まるで人ごとのようだった。


○癌患者の相談員が癌を患った利用者宅を訪問!?

受診後すぐに、上司に電話し事情を話した。上司は非常に驚き、「柴川さん、大変だけど大丈夫だから、仕事のことは心配しなくていいからね、僕から常務には話しておくよ」と励まされた。ありがたかった。最低2ヶ月くらいは仕事を休むだろうし、同僚に自分の仕事の負担をかけることを思うと申し訳なかった。その後、入院直前までは仕事をし、寸前に朝礼でみんなに手術なのでしばらく休むことを伝えると、同僚は暖かく、励ましの言葉でがんばってねと送り出してくれた。本当に涙がでるほど有難かった。

私の仕事は在宅のしょうがいや病気・認知症で介護や支援が必要な高齢者で、在宅福祉サービスを利用されているお宅へ訪問し、サービスの調整、生活相談・介護保険等への相談・関連機関への連携を担当している。担当の利用者さんはほとんど病気を過去になさっている方々ばかり。その当事者にしか分からない辛さ、苦しみについては、私はとにかく耳を傾けて聞き、励ましていき、利用できるサービスや支援の制度を紹介してきた。自分が健康な時は相手の話を客観的に聞ける。しかし、今回一番きつかったのは、ある利用者さん宅を訪問した際、その方は乳癌のあと、予後が悪くあちこち支障がでてきて受診を何年も続けている。その利用者さんが、「ガンていうのはね、一度できると血液を通して体のどこへでも転移していくのよ。だから、どこかの体の部分が痛くなるたびに、あっ、ここに転移したのか?と心配し、その痛みが長く続かなければただの筋肉痛かと思ったりと、いつもこの不安とつきあっていかなきゃならないのよ、だからうつになってしまってね。つらいのよ」と面と向かって言われたとき、「これから手術うける人に向かって、なんで否定的な希望のないこというんだよ〜!」と叫びたかった。もちろん、相手は私がそういう状態だと知るはずがないし、私も決して仕事上、専門職としてそんなこと言えない。正直、あまりその手術までの期間は、丁寧に仕事ができたとはいえない。利用者さんに申し訳なかったと思う。だからこそ、早く元気になって、自分自身のこの病の経験があってこそ、よりよい相談員として、相手の立場にたって、相談業務ができるようになるぞと思わされた。のちになって、自宅療養中に、自分も実際うつ的状態を通って初めて、この利用者さんの気持ちを理解できたのでした。。(詳細はMy Jounal vol3)


○万が一のことあるから、なるべく友達に会っておこう!?


心の片隅に、死ぬかもしれないという思いもあった。私のケースはステージは初期とはいえ、がん細胞が胃壁の粘膜層下部に浸潤していて印環細胞がんのため、肉眼で5センチといっても胃壁のどこまで広がっているか不確定なのだ。おなかを開いて見て、周りのリンパをとって、病理検査で調べてみたらリンパに転移している可能性もある、若いから進行も早い。50歳以前の人がゼロ期胃ガンを発見した場合,切除術では残っている胃にもう一つのガンができる可能性が10 早期胃癌で癌浸潤度が粘膜下層に限局しているものの 5年生存率83%)ネットで調べれば調べるほど、恐ろしい症例ばかり書いてあり見るのをやめた。できれば、何かの間違い、たとえば病理検査したとき、他の人と入れ替わってしまったとか、もう一度内視鏡で見たら、消えていたという奇跡がおこらないかと神様に願った。
11月6日の朝になって、そうだ、万が一のことがあるから、なるべく友達にあっておかないととものすごい勢いで、大学の時に友達、社会福祉専門学校の時の友達、アメリカに留学・仕事していた時の友達と、メイルを数人に今週来週中に会えないかと打診した。みんなは快く食事をするために会ってくれて、中には家にまで飛んできてくれた友人もいた。有難かった。こんな私のことを心配してくれる友人達。また、大好きな97歳の祖母にも会いに行き、15日の入院の日まで毎日ように人と会った。みな驚いてショックをうけていたが、励まし応援してくれた。「万が一なんてないよ、胃がんはとってしまえば、みな元気に食べられるようになっているという話を聞くよ」と。もっと昔にさかのぼって会いたい友人たちもいたが時間がなかった。事前検査の内視鏡ではっきりがんが確認される。いよいよ腹切りか。1115日に入院。そして、手術前に家族とともに受けた先生から説明は、思った以上に深刻だった。。



   
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